医療者向け

救急外来で心原性失神が疑われる患者を循環器内科に紹介するときに必要な情報をまとめました。

失神患者を循環器内科にコンサルト

こんにちは、たくゆきじです。
 
今回は
 
救急外来で失神の患者さんを循環器内科にコンサルトするときに揃えてほしい情報
 
を記事にします。
 
循環器疾患が原因で失神する場合を「心原性失神」といいます。
 
失神で救急外来を受診する患者さんは一定数いて、心原性失神を疑い循環器内科にコンサルトするときがあると思います。
 
私はコンサルトが来る側ですが、コンサルトが来た時に循環器内科医として
 

たくゆきじ
たくゆきじ
この情報があるとスムーズに診療にとりかかれるな

 
という項目があります。
 
それは以下の項目です。
 

揃えてほしい情報

①現病歴(失神した状況)
②検査結果(特に採血、心電図、心エコー)
③内服薬
④失神歴
⑤突然死の家族歴

 
これらの情報があると循環器内科としてはスムーズに診療に移ることができます。
 
この記事ではこれらの情報があるとなぜ私が助かるのかについて解説します。
 
循環器内科にコンサルトする際に役立つと思いますのでぜひご覧ください。
 
救急外来でのカルテの書き方のテンプレートは↓の記事も参考にしてみて下さい。

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心原性失神をきたしうる循環器疾患

失神
まず心原性失神をきたしうる循環器疾患を解説します。
 
私は日本循環器学会が出している失神の診断・治療ガイドライン(2012年改訂版)に準じて診療しています。
 
失神の診断・治療ガイドライン(2012年改訂版)では心原性失神をきたす疾患として不整脈器質的疾患が記載されています。
 
具体的には以下の疾患です。
 

不整脈

①徐脈性不整脈
 ⇨洞不全症候群、房室ブロック、ペースメーカ機能不全
②頻脈性不整脈
 ⇨心室頻拍、心室細動など

※薬剤誘発性の不整脈も含む

 

器質的疾患

①心疾患
 弁膜症・人工弁機能不全
 急性心筋梗塞/虚血
 肥大型心筋症,
 心臓腫瘤(心房粘液腫,腫瘍等)
 心膜疾患(心タンポナーデ)
 先天的冠動脈異常
②その他
 肺塞栓症
 急性大動脈解離
 肺高血圧

 
つまり循環器内科にコンサルトする際にはこれらの疾患の診断の手助けとなる情報があればいいわけです。
 
では具体的に次の章で必要な情報について解説します。

循環器内科医にコンサルトするときに揃えてほしい情報

循環器内科医に紹介するときのチェックリスト
 

たくゆきじ
たくゆきじ
この章ではコンサルトの際に揃えてほしい情報を解説します。

 
前述しましたが、揃えてほしい情報を改めて示します。
 

揃えてほしい情報

①現病歴(失神した状況)
②検査結果(特に採血、心電図、心エコー)
③内服薬
④失神歴
⑤突然死の家族歴

 
それぞれ解説していきます。

①現病歴(失神した状況)

失神の中には心原性失神の他にも反射性(神経調節性)失神というものがあります。
 
その反射性失神の中の項目に「状況失神」というものがあり、ある特定の状況または日常動作で誘発される失神とされています。
 
状況失神を起こしうる特定の状況、または日常生活動作はガイドラインでは以下のものが紹介されています。
 

①咳嗽、くしゃみ
②嚥下、排便、内臓痛
③排尿(排尿後)
④運動後
⑤食後
⑥その他(笑う、金管楽器吹奏、重量挙げ)

 
また動悸胸痛の有無は心原性失神を示唆するためこれらも記載していただけると助かります。
 

●状況失神を考慮して現病歴をきちんと記載する。
●動悸や胸痛の有無も記載する。

②検査結果

たくゆきじ
たくゆきじ
心原性失神を疑う場合は心電図、心エコー、採血が重要です。

 
それぞれの検査について解説します。

心電図

心電図は先程お示しした心原性失神を起こしうる循環器疾患のうち以下の赤字で示した疾患の診断の助けになります。
 

不整脈

①徐脈性不整脈
 ⇨洞不全症候群、房室ブロック、ペースメーカ機能不全
②頻脈性不整脈
 ⇨心室頻拍、心室細動など

※薬剤誘発性の不整脈も含む

 

器質的疾患

①心疾患
 弁膜症・人工弁機能不全
 急性心筋梗塞/虚血
 肥大型心筋症
 心臓腫瘤(心房粘液腫,腫瘍等)
 心膜疾患(心タンポナーデ)
 先天的冠動脈異常
②その他
 肺塞栓症
 急性大動脈解離
 肺高血圧

 
特に不整脈を診断するときは心電図は欠かせません。
 
また救急部を受診したときにはこれらの不整脈が停止していても、Brugada型心電図QT延長といった心電図所見を認める場合もあります。
 
ちなみに経験上見逃されやすい心電図は二枝(二束)ブロック三枝(三束)ブロックです。
 
二枝(二束)ブロック三枝(三束)ブロックをきたしている方が失神した場合は植込み型心電計(ILR)の植え込みペースメーカー植え込みを考慮しますので循環器内科にコンサルトして下さい。
 
二枝(二束)ブロック三枝(三束)ブロックと聞いてもピンと来ない方はレジデントのためのこれだけ心電図という本にわかりやすく書いてありますので勉強してみて下さい。

心電図の本、教科書
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心エコー

心エコーは以下の赤字で示した器質的疾患の診断の助けになります。
 

器質的疾患

①心疾患
 弁膜症・人工弁機能不全
 急性心筋梗塞/虚血
 肥大型心筋症
 心臓腫瘤(心房粘液腫,腫瘍等)
 心膜疾患(心タンポナーデ)
 先天的冠動脈異常
②その他
 肺塞栓症
 急性大動脈解離
 肺高血圧

 
これらの疾患の有無を判断するときにエコーは威力を発揮します。
 
ただ循環器内科以外の医師が心エコーでこれらの疾患を判断するのは難しいと思いますので診断まではしなくて構いません。
 
ただ循環器内科医が到着する前に心エコーの電源をつけておいて下さればそれで十分です。

採血

採血では直接心原性失神をきたしうる疾患を診断できるわけではありません。
 
ただ電解質異常は確認しておいてほしいです。
 
低K血症に伴うQT延長→心室頻拍や心室細動」
 
という流れはたまにあるため採血では電解質を忘れずとっていただきたいです。

③内服薬

内服薬は大変重要です。
 
というのも内服薬の中には二次的にQT延長を引き起こす薬剤があるからです。
 
特に抗不整脈薬は致死性不整脈を惹起する時があり重要です。
 
具体的な薬剤名は遺伝性不整脈の診療に関するガイドライン(2017 年改訂版)というガイドラインの二次性QT延長症候群(二次性LQTS)という項目に書いてありますので興味のある方は参考にして下さい。
 
見るのがめんどくさい方はとりあえず内服薬は重要ということだけ覚えていただければそれで大丈夫です。

④失神歴

失神歴もまた重要となります。
 
原疾患によっては治療方針(ICD植え込みの判断)にも影響しますが、自動車運転の可否を判断する際も重要となります。
 
ペースメーカ,ICD,CRT を受けた患者の 社会復帰・就学・就労に関するガイドライン(2013 年改訂版)では「再発性の失神」をきたした患者は運転の可否を「個別に判断する」とされています。
 
このように再発性の失神は運転の可否の判断に影響しますのでぜひ聴取しておいてもらえるとありがたいです。
 

たくゆきじ
たくゆきじ
自動車運転は日常生活に大きく関わるためいつも判断に悩むんですよね…

 
なお私は失神患者の運転免許の扱いに関してはペースメーカ,ICD,CRT を受けた患者の 社会復帰・就学・就労に関するガイドライン(2013 年改訂版)失神の診断・治療ガイドライン(2012年改訂版)に準じて個別に判断しています。
 
失神患者の診療に携わる方は参考にしてみて下さい。

ペースメーカーと運転
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⑤突然死の家族歴

突然死の家族歴は特にBrugada型心電図肥大型心筋症で失神した患者さんの治療方針の決定の際に重要です。
 
リスク評価の1つの項目となります。
 
これだけで治療方針を決定するわけではありませんが、聞いておいてもらえると助かります。
 
ちなみにBrugada症候群の患者さんを循環器内科に紹介するときの紹介状のテンプレートを過去に記事にしました。参考にしていただけましたら幸いです。

Brugada症候群の心電図
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まとめ

この記事では救急外来で失神の患者さんを循環器内科にコンサルトするときに揃えてほしい情報をお伝えしました。
 

揃えてほしい情報

①現病歴(失神した状況)
②検査結果(特に採血、心電図、心エコー)
③内服薬
④失神歴
⑤突然死の家族歴

 
みなさんのお役に立てれば幸いです。
 
※なおこの記事が完璧だとは全く思っていないので、循環器内科の先生でご意見がある方はぜひTwitterお問い合わせでご指摘頂けましたら幸いです。記事を訂正いたします。
 
<<参考文献>>
失神の診断・治療ガイドライン(2012年改訂版)
ペースメーカ,ICD,CRT を受けた患者の 社会復帰・就学・就労に関するガイドライン(2013 年改訂版)
遺伝性不整脈の診療に関するガイドライン(2017 年改訂版)

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専門は循環器の内科医師です。 私が気づいたことや学んだことを書き記していくブログです。 FacebookやTwitter、Instagramでも情報発信していますのでぜひフォローしてくださいね。