医療・病気

ペースメーカーやICD(植込み型除細動器)と運転免許の制限について解説します。

ペースメーカーと運転

こんにちは、たくゆきじです。
 
今回の記事では
 
ペースメーカーやICDの入った患者さんの運転に関する取り決め
 
に関して記事にします。
 
外来で患者さんから
 

患者さん
患者さん
ペースメーカーが入っているんだけど運転していいんですか?

 
と聞かれることがあります。
 
田舎では運転が可能かどうかで移動範囲が変わるので気になるのも当然です。
 
この質問は1度だけではなく今までの外来の中で何度も受けました。
 
そこで同じように悩まれている方も多いと思ったので、日本のガイドラインに準拠してペースメーカーやICDが入った患者さんの運転について記事にしました。
 
ぜひご覧ください。
 

運転免許に関する規定は例外もありこの記事が絶対の内容ではありません。
 
わからないことは必ず主治医に確認するようにして下さい。

ペースメーカーとICDの違い

まずペースメーカーとICDについて簡単に説明します。
 
(これらの機器の詳しい内容は本編の内容からそれるので簡潔に説明します。)

ペースメーカー

ペースメーカーは心臓の治療に使う機械です。
 
どのような病気の治療のために使うかというと
 
徐脈性不整脈
 
の治療のために使います。
 
徐脈性不整脈は一言で言うと異常に脈が遅くなることです。
 
正常な心拍数は50~100回/分なのですが、心拍数が異常に遅くなると全身に十分な血液が送り出せなくなり具合が悪くなります。
 
頭に血液が送られなくなるときもあるので失神するときもあります。
 
ペースメーカーは心拍数の足りない心臓に電気で命令し、心拍数を稼ぐ役割があります。

ICD

ICDは日本語に直すと植込み型除細動器といいます。
 
ICDは一言で言うと
 
致死性不整脈が出た時に治療してくれる機械
 
です。
 
致死性不整脈とは心臓が突然止まってしまう危ない不整脈のことです。
 
そのまま致死性不整脈が止まらなければ死んでしまいます。
 
その不整脈を止めてくれる機械をICDといいます。
 
ICDでの治療の内容は大きく

●電気ショック
●抗頻拍ペーシング

 
の2つです。
 
(電気ショックはイメージしやすいと思いますが、抗頻拍ペーシングは分かりづらいので名前だけで結構です。)
 
イメージとしてはAEDを体内に植え込んでいるようなものだと思って下さい。
 
なお、ICDには先程述べたペースメーカーの機能もついています。
 
そのため、ICDは
 
電気ショック機能付きのペースメーカー
 
と表現するとわかりやすいかもしれません。
 
S-ICDやCRT-Dに関しては煩雑になるためここでは割愛します。)

原則許可と原則禁止

ここからペースメーカーICDの運転免許の扱いについて説明します。
 
ペースメーカーとICDの見た目は似ているのですが、運転免許の取り扱いは全く違います。
 

ペースメーカーの場合原則許可

ペースメーカーに関しては、植え込み後に意識消失やペースメーカーの不具合がなければ通常通り運転は可能です。
 
診断書の提出も必要ありません。
 
これを原則許可といいます。
 
これらより基本的にペースメーカー挿入後は運転は原則として許可されています。
 

ペースメーカー植え込み後に意識消失発作があると運転が禁止される場合もあります。
 
個々の状況に応じて異なりますので、厳密には主治医に確認して下さい。

ICDの場合原則禁止

ICDに関しては、植え込み後は運転に支障をきたす恐れがない場合にだけ運転が許可されています。
 
ICDが入った患者さんが運転を行うためには、
 
ICD研修を履修した医師から「運転を控えるべきとはいえない」という旨の診断書を書いてもらい、各都道府県の公安委員会に提出して運転可能と判断される必要があります。
 
また、1度診断書を書いてもらえば終わりではなく、6ヶ月毎の再審査の診断書提出が必要です。
 
これを原則禁止といいます。
 
ICDが入っていると基本的には運転禁止ですが、一定の条件を満たすと期限付きで運転を許可できるということです。
 
致死性不整脈が出現するとICDが入っていても意識障害をきたす可能性があり交通事故につながるため、ICDが入った患者さんの運転は厳密に管理されています。
 
なおICDが入った患者さんがバスやタクシーの運転などの職業運転を行うことは、意識消失発作やICDの電気ショックで重大な事故に結びつく可能性があるため許可されていません。

ICD植え込み後の運転制限期間

ここからはICDに関してさらに説明していきます。
 
ICDが入った後に運転しようとすると、「運転を控えるべきとはいえない」という診断書が必要となりますが、実は運転制限期間というものがありその間は診断書を書くことができません。
 
まずはこちらのサイトをご覧ください。
>>>一般社団法人 日本不整脈神殿学会 | ICD・CRT-D植込み後の自動車の運転制限に関して
 
みておわかりの通り、状況に応じて運転制限期間が異なるためそれぞれ解説します。

一次予防目的新規植え込みと二次予防目的新規植え込み

まず
 
一次予防目的の植え込み二次予防目的の植え込み
 
について解説します。

一次予防目的の植え込み

一次予防目的の植え込みとは、
 
意識消失発作や致死性不整脈は今までないが、今後起こる可能性があり予防のためICDを入れること
 
です。
 
突然死の家族歴のあるBrugada症候群の患者さんに行うことがあります。
 
この場合は植え込み後7日間意識消失やICDの作動がなければ診断書を書くことができます。

二次予防目的の植え込み

二次予防目的の植え込みとは、
 
致死性不整脈に伴う意識消失発作の既往がある患者さんにICDを入れること
 
です。
 
この場合はまた致死性不整脈が起こるかもしれないので、植え込み後6ヶ月間運転を制限し致死性不整脈が出るかどうか経過観察を行います。
 
植え込み後6ヶ月間意識消失やICDの作動がなければ診断書を書くことができます。

ICD適切作動とICD不適切作動

先程のリンク先でICD適切作動後は3ヶ月間運転が制限され、不適切作動後は運転の制限がないとされています。
 
おそらく多くの人は
 

適切作動と不適切作動の違いがわかりません。

 
と思われたと思いますので解説します。

適切作動

適切作動とは
 
致死性不整脈に対してICDが治療を行ったこと
 
です。
 
この場合は致死性不整脈に対して適切に治療されているため、意識消失のリスクが高いものと判断され3ヶ月間運転を制限して経過観察を行います。

不適切作動

不適切作動とは
 
致死性不整脈ではない不整脈を致死性不整脈とICDが誤って認識して治療を行ったこと
 
です。
 
ICDも様々なアルゴリズムで不整脈を検出していますが、どうしても完璧に致死性不整脈だけを検出することは難しく、稀に致死性不整脈ではない不整脈を致死性不整脈と認識し治療を行うことがあります。
 
これを不適切作動といいます。
 
この場合は致死性不整脈が出ているわけではないので、意識障害がないなら運転の制限はありません。
 
このようにICD植え込み後は運転制限期間が状況に応じて異なります。
 
詳しくは主治医に確認するようにして下さい。

まとめ

以上ペースメーカーやICDを植え込んだ場合の運転免許の制限について解説してみました。
 
みなさんのお力になれましたら幸いです。
 

 
<<参考文献>>
一般社団法人 日本不整脈心電学会 / ICD・CRT-D植込み後の自動車の運転制限に関して
ペースメーカ,ICD,CRTを受けた患者の社会復帰・就学・就労に関するガイドライン(2013年改訂版) / 日本循環器学会
失神の診断・治療ガイドライン(2012年改訂版)/ 日本循環器学会