学会で講演をすることになりました

学会発表と英語論文と最小単位のお話

先日あるツイートを見た。

私が大好きなフランケン先生のツイートは心をえぐる本質的な呟きが多く、痛恨の一撃を与える致死的ツイートぞろいである。

今回のツイートも私に致死的なダメージを与えるものであった。

このツイートを見た時にパッと頭に浮かんだのは、「学会発表と論文の関係性」であった。

個人的にこちらについて、思うことをつらつらと書き連ねてみようと思う。

科研費の書類

話は変わるが「科研費」というものがある。

これは研究をするために国から支援してもらえるお金のことであり、そのためには申請しなければならない。

【公式ホームページ】科学研究費助成事業

私は大学院を卒業したときに初めてこの書類を書くことになった。2022年4月のことである。

中には「研究目的、研究方法など」などいろいろな章があるのだが、その中でこういう内容をかかなければならない。

応募者の研究遂行能力

ここでは「今までの職業人生」が端的に問われている。

つまり「あなたは国がサポートするに足る、お金を出すに値する結果を残してきた人なんですか?」という国からの質問に的確に答えなければならない。

具体的には

〇〇学会YIA優秀賞

といった賞だったり

自分の書いた筆頭論文

を書いたりするわけだ。

ここで私は気がつくことになった。

真に驚くべきことだが、ここには「学会の一般演題の発表歴」を書く欄は基本的に存在しない。

そう、存在しないのである。

え…そうなの…?

たくゆきじ

その事実を早く教えてよ

私は医師になってからちょうど10年が経過している。

学会でボチボチ発表はしてきているのだが、発表した演題を論文にするという習慣はなかった。

ただこの科研費に直面するまで、正直いって知らなかったんだよね。

学会の一般演題の発表歴をどんなに積み重ねても業績にはならないこと」に。

つまり業績面で私は、10年間ほとんど何もしていなかったおじさん、という扱いになっている。

おいおい、マジかよ…

たくゆきじ

業績欄に「私のブログのURLと、m3で連載中のコンビニ飯のURLでも貼り付けてやろうかな」とか頭がおかしいことを考えてしまったが、そんなことをしたら科研費からパージ(永久追放)されかねないため当然不可能だ。

ちなみにこの時点では臨床論文を一本、地方会のYIAをかろうじて取っていたため、そちらを記載したわけだが当然のように科研費は通らなかった。

人生初の論文がAcceptされたので、その道のりを書き記しておく 人生初の論文がAcceptされたので、その道のりを書き記しておく

冒頭のツイートに戻ろう。

その現実を科研費の書類で突きつけられた私は、涙にくれることとなった。

現実を受け入れて、戦うことにした

ただ過去を嘆いてもしょうがないので、とりあえず闘ってみることにした。

具体的には「学会で発表した演題は、絶対に論文にする」という誓約を自分に設けることにした。

まず書く。

必ず書く。

通るまで書く。

日本電産創業者、永守重信氏と仲良くなれるレベルのマッチョな戦略である。

論文として形になるかどうかはわからない。

ただ書かないと何も始まらない。

その誓約を自分に設けたのが2022年04月なわけだが、その後学会で発表したものは症例報告ではあるものの、なんとか英語の論文としてacceptされている。

①感染性心内膜炎の症例報告

→1つ目のJournalからはEditor kick。次のJournalにaccept。


②たこつぼ型心筋症の症例報告

→狙っていたJournalから一発accept


③アミオダロンの稀な副作用の症例報告

→投稿準備中

実際にこのスタイルで書いてみると、学会発表をする時点で割と調べているのでcase reportを書くこと自体は追加労力がそこまでいらないことに気づく。

また論文は書き続けると慣れてくるのか、自分にかかる体感負荷が軽くなっていくのを感じる。

最初の感染性心内膜炎の論文を書いたときの負荷を100とすると、アミオダロンの論文の負荷は60くらいで書くことができた。

書けば書くほど楽につぎはかける、というこの感覚はブログでも経験していたが、論文でもやはり同じようである。

これからは自分がサブスペシャリティに選んだ、不整脈関係の論文を書いていきたいと思っている。

最小単位を意識しよう

ということで、これからは最小単位を意識することにした。

学会の一般演題はいくら繰り返しても積み上げにはならない。

積み上げるための最小単位は、学会発表ではなく論文である。

私はこのことに気づくまで10年かかってしまったけど、もしこの記事を読んでいるあなたのためになればとても嬉しい。

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