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学位取得と学位論文について

足の裏の米粒

学位はそう呼ばれることがある。学位があってもそれだけでは食えないけれど、とらなかったら気持ち悪いということを指して表現されている。

正直私は大学院に進学するまで、学位を取得する意味はないと思っていた。本当に思っていた。

卒業する段に至り、その考えは今では、180度変化した。

私は大学院に入って良かった。

なぜ「良かった」と思えるのか

大学院に進学して良かったと、なぜ今思えているのだろうかと考えてみる。

すると3つの理由が浮かび上がってきた。

(1)濃密な2年間で自分を強烈に鍛えることができた

(2)ベッドフリーの大学院生活だったので、自分のペースで新しいことに向き合う時間ができた

(3)暇な時間をうまく使える能力が身についた

この3つが大きいと思う。それぞれ考えてみたい。

濃密な2年間で自分を強烈に鍛えることができた

私は大学院生活4年間のうち、前半2年間を社会人大学院生として、その後1年間休学を経て、後半2年間をベッドフリーの大学院生として送ることになった。

今回の「濃密な2年間」とは、前者ではなく後者のベッドフリーの2年間のことを指している。

前半の2年間は、臨床業務に対して自分の力量が追いついてなさすぎて、研究に割り振る体力も時間も余裕がなかった。そういう意味で、研究はほぼ何もやっていないと言っていい。

海外学会での発表も、AHA2018で発表したくらいだ。

海外学会のAHA2018 【国際学会体験記-シカゴ編①-】海外学会へ準備したものと飛行機に乗るまでの話

一方、後半2年間はベッドフリーの大学院生として基礎研究に力を注ぐことになる。この期間は目の前の研究を頑張ると決めていたので、実験をしたり論文を読んだりすることでアカデミアとしての素地を身につけることに注力した。

これらの能力は、7つの習慣でいうところの「緊急ではないが重要なこと」に入ってくる領域の物事だと思う。

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今すぐ必要ではないが、身につけておくと後々役に立つ能力たち。それをこの2年間の大学院生活で高めることができた。

実際、臨床復帰後に学会発表の機会があったが、前より短時間でクオリティの高いものが準備できるようになったと思う。

こういう能力は会得が早ければ早いほど使う機会が増えるので、もし環境が許すならば早めに大学院に行ってもいいかもしれない。

またベッドフリーの期間のうちに、論文をとりあえず1本acceptさせる経験ができたのも大きい。

1本書く前は「論文執筆」という行為は信じられないくらい難しい、なんなら無理ゲーだと思っていた。

しかし1本書いてみると、厳しい道ではあるが頑張れば自分でもなんとか書けるかもしれない「現実的な難易度のゲーム」と思えるようになった。

そういう意味で自分の能力は間違いなく鍛えられたし、マインドセットも変わったと思っている。

人生初の論文がAcceptされたので、その道のりを書き記しておく 人生初の論文がAcceptされたので、その道のりを書き記しておく

ベッドフリーの大学院生活で新しいことに向き合う時間ができた

私はベッドフリーになったことを、「人生のカルディオバージョン」と表現していた。

ベッドフリーになる前は、臨床業務が忙しくて、他のことを考える余裕がだいぶ失われていたように思う。

それが突然ベッドフリーになると、ボーッとできる時間が増える。仕事以外の人生に思いを馳せる余裕が生まれる。

まるで頻脈性心房細動から洞調律に戻った時のように、かなり冷静に物事を振り返ることができた。

心房細動の患者さんを診察する際にあると助かる情報をまとめてみました。 心房細動の患者さんを診察する際にあると助かる情報をまとめてみました。

この辺の時間の余裕ができて人生に思いを馳せることのできる感覚は、急性期病院から慢性期病院に異動した時にも感じたことである。このベッドフリーの2年間でも強く思うことができた。

高齢者の転院 慢性期病院に異動になって気付いたこと

その過程でマイホームを建てるという決断もした。

その意味で病棟業務から離れて、いろいろなことに思いを馳せる余裕が生まれたのは、自分にとってかけがえのない2年間だったように思う。

たくゆきじの夢のマイホーム奮闘記 もともと賃貸派だった私が戸建住宅を建てることになったわけ

暇な時間をうまく使える能力が身についた

2つ目の意見に近いかもしれないけど

暇な時間を自分にとって有意義に使うようになるためには、ある程度努力して能力を身につける必要がある

と最近感じるようになった。

暇な時間の有意義な使い方」って人それぞれだと思う。

飲みに行くのもいいし、読書をしても良い。

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家族とお出かけをするのだって、一つの時間の使い方だ。

ただ使い方の違いがあるだけで、そこに貴賤はないと本当に思う。

ただいきなりどかっと時間を与えられると、その時間をどう使っていいかわからないから、時間を持て余すんだよね。

少なくとも、私はそうだった。

ただ大学院に入ってから研究に限らずブログやらなんやら色々と手を出してみた結果

環境によらず暇な時間をうまく使える能力が身についた

と強く感じている。

もともと楽観的な性格ではあるけれど、今だとどの環境に行くことになってもその環境なりに人生を楽しめるようになったと思う。

抽象的な言い方で申し訳ないけれど暇な時間を自分にとって有意義に使うための能力は大学院でだいぶ磨かれたような気がするなぁ。

最後に…

ということでベッドフリーの大学院に行った時のメリットは以下の3つである。

(1)濃密な2年間で自分を強烈に鍛えることができた

(2)ベッドフリーの大学院生活だったので、自分のペースで新しいことに向き合う時間ができた

(3)暇な時間をうまく使える能力が身についた

n=1の体験談で恐縮ではあるが、誰かの参考になったのであればとても嬉しい。

ちなみに余談だが、学位論文は製本キットで製本することが多いと思う。私の通っていた大学院も、製本して審査する教授に読んでもらうことになっていた。

残骸の写真で恐縮だが、こういう製本キットを使って学位論文を製本する。

パチン。パチン。パチン。

こういう製本キットを使って、学位論文の形に仕上げていく。実際に私が提出した学位論文はこちらである。

この「製本」という儀式めいたアナログの行為をしている過程の最中に、大学院生活の思い出がなんとなく思い起こされる。

思い出の詳細までは覚えてないけれど、

あぁ…俺…割と頑張ったなぁ…

たくゆきじ

という感覚だけは明確に思い出される。

なんだか思い出すんだよ。

夜中にマウスの様子を見に、寒い中一人で実験室に向かった日も。

実験室のスタッフと実験室で笑い合った日も。

後輩と夜中に基礎棟の一階のソファーに座って、アイスを食いながら将来について話しあった日も。

振り返ってみるといい思い出として自分の中に残っている。

この時のなんとも言えない満足感だけで、大学院に入って良かったというような気持ちになってくる。

この記事を読んでいる先生の大学院が、デジタルデータの提出だけで済む場合だとしても、アナログの製本キットを使って学位論文を製本するという過程をぜひ経験してほしい。

なんともいえない満足感が、胸に去来することになるだろうから。

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MEMO

本記事はエムスリーのメンバーズメディアのコラム「大学院で医師が身につけた「緊急でないが重要」なスキル」を加筆、修正したものです。

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