こんにちは、たくゆきじ(@takuyukiji)です。
今回の記事では
を紹介します。
たくゆきじ
ではご覧ください。
教養が身につくおすすめの本や歴史書
今回紹介する書籍は以下のとおりです。
サピエンス全史
すなわち、ホモ・サピエンスが世界を征服できたのは、何よりも、その比類なき言語のおかげではなかろうか。
・・・サピエンス全史より引用
全世界で大ヒットしたサピエンス全史。
本書では我々ホモサピエンスが世界を急速に支配した歴史について綴られていきます。
内容はどれも刺激的でしたがとりわけ印象的だったのは言語に関する考察です。
ホモサピエンスは「言語」を操る能力のおかげで地上の覇者になることができました。
中でも重要だったのは虚構の存在(=共同幻想)を語る能力です。
本書における共同幻想とは「現実にまったく存在しないもの」とされています。
現実に存在する「ライオン」について語ることのできる動物は多いものの、「宗教」や「会社」といった現実に存在しない虚構を語れる動物はホモサピエンスのみです。
ではこの虚構について語ることができるとどのように有利なのでしょうか?
その理由は会ったことがない個体どうしでも集団で協力しあえるからと本書では説明されています。
「赤信号は止まれ」というルール(=虚構)を疑う人はほぼいません。
このおかげで交通環境は整備され、我々は効率よく移動することができます。
ただ他の動物がこのルールを守ることができるかというとそうではありません。
このルールを語る言語を持たないし、仮に語ることができたとしても会ったことのない個体がこのルールを守ると心から信じられないからです。
直接話したことのあるチンパンジー同士ならこのルールを守れるかもしれませんが、信頼関係のないチンパンジー同士でルールを共有することは不可能です。
一方我々ホモサピエンスは直接会ったことのない赤の他人も「赤信号は止まれ」というルールを信じていると心の底から思い込むことができます。
その背景には
という国家(法律)に対する信頼があるわけですね。
もちろん国家や法律も共同幻想の一つです。
この強い思い込みにより我々は協力しあうことができ、効率よく協力できるというわけです。
虚構を語りさらに会ったことのない赤の他人もその虚構を守ると心の底から信じられること。
この能力がホモサピエンスの力の本質だと本書で述べられています。
また以下のフレーズも印象的でした。
贅沢品は必需品となり、新たな義務を生じさせる
・・・サピエンス全史より引用
贅沢品に一旦なれてしまうとそれを当たり前とみなすようになるため、それがないと生活できなくなります。
例えばスマホです。
最初はただ便利なデバイスでしたが、皆がスマホを使い始めるにつれ徐々に優位性を維持できなくなります。
その結果スマホの使用方法に習熟せざるをえません。使いこなさなければ競争から脱落してしまうわけですから。
このように
人類全体で見れば革新的な進歩でも個でみると苦しみが増しただけという事例
はいくらでもあります。
「狩猟採取生活から農耕生活への移行」もそう。「手紙からメールへの情報伝達手段の変化」もそうでした。
このように種全体の進歩と個体の幸せは一致しないという視点を本書を読んで得ることができました。
こんなにも知的好奇心を駆り立てる本は今まで読んだことがありません。
FACTFULNESS(ファクトフルネス)
時を重ねるごとに少しずつ、世界は良くなっている。
・・・FACTFULNESS(ファクトフルネス)より引用
本書を読んでいてもっとも印象的だったフレーズです。
物騒なニュースを目にするたびに
と思いがちです。
ただデータに基づいて世界を俯瞰すると、実は世界は確実により良い方向に向かっているんですね。
ではなぜ世界はより良くなっているにも関わらず、私達の印象の中では世の中はだんだん物騒になっている気がするのでしょうか?
その理由は「本能」にあると本書で解説されています。
何百万年にも渡る進化の結果、狩猟や採集をしながら生き残るために「本能」が人間の脳に組み込まれることになりました。
本書ではこの「本能」を10個紹介しています。
かつては生き残る上でこれらの本能は必要不可欠でしたが、現代の社会をありのままに認識するためには障害になっていると述べられています。
例えばネガティブ本能。
例えば「アメリカの犯罪件数は去年より増えているか減っているか?」というアンケートをとると、「増えている」と答える方が過半数を占めます。
事実としてはアメリカの犯罪件数は経時的に減っているにも関わらずです。
その理由はネガティブな報道のほうがポジティブな報道より広まりやすいからです。
物事が良くなったとしてもそれを伝えるポジティブな報道はネガティブな報道に比べて少なく、その結果ネガティブな報道ばかりが耳に入るようになります。
その結果世界に対して実際より悪いイメージを抱くようになり、暗い気持ちになってしまうというわけです。
このネガティブ本能とうまく付き合うために「良いニュースよりも悪いニュースのほうが広まりやすい」という事実を知っておくことが重要とのことでした。
そうすることでネガティブなニュースを耳にしてもポジティブなニュースも同じくらい溢れているということを意識できるからです。
このように世界を誤って認識してしまう原因の「本能」の解説とその対策が明快に記されています。
最後は以下のフレーズで締めくくられています。
事実に基づいて世界を見れば、世の中もそれほど悪くないと思えてくる。
・・・FACTFULNESS(ファクトフルネス)より引用
過度に悲観的にならず事実に基づいて(ファクトフルに)物事をとらえることができるようになれば、いずれこの境地に我々もたどり着けるのかもしれません。
坂の上の雲
「坂の上の雲」は日露戦争を舞台にした司馬遼太郎先生の歴史小説です。
日本は1868年に明治維新をなしとげ「富国強兵」のスローガンのもと近代化への道を突き進んでいきます。
そこで立ちはだかったのがロシア。
日清戦争でようやく勝ち取った遼東半島を三国干渉で返却せざるを得なくなったことをきっかけにロシアとの対立が決定的となり日露戦争へ突入していきます。
最終的に日本海海戦で日本の連合艦隊がバルチック艦隊を文字通り撃滅したことで列強の一角として名乗りをあげることになります。
私の日露戦争に対するイメージは
というしろうと丸出しの感想しか持っていませんでした。
ただ本書を読み進めていくとそれが誤解であることに気付きます。
実は日露戦争では日本側は常にギリギリの戦いを強いられていたのです。
それもそのはず。日本軍よりロシア軍のほうが圧倒的に格上でしたから。
明らかに格上の敵を相手取った場合の勝利条件をどこに設定するのか。
自軍を統率する際に司令官はどう立ち振るまうべきなのか。
現代社会でも通用する教訓が本書には満載でした。
本書の中で最も印象的だったのはリーダーのありようです。
主人公の一人、秋山好古が苦戦の中で酒を飲むシーンがあります。
・・・wikipediaより引用
わざわざ戦場で酒を飲む理由は、酒を飲むことであたりまえの自分を維持するためです。
指揮官の精神がどういうぐあいであるかを、味方にみせてやらねばならない。その意味では、いくさは指揮官にとって命がけの演技であった。
…坂の上の雲より引用
命がけの戦のときは指揮官の精神状態が兵に伝わるため、冷静さを維持することは重要とのこと。
これは私が普段医師として働く際に考えていることでもあります。
医師は医療現場では指揮官としてたち振るわなければならない場面が多いため、私が動揺している姿を見せるとスタッフも不安になります。
そのため不安を噛み殺しながら努めて冷静に対応することを心がけています。
私が急変時の対応で意識していることは
「出来る限り大声を出さないこと」
です心の中は不安で不安でしょうがないんですが声を荒げるとスタッフに不安が伝わると思います
急変の場面に遭遇したら一度深呼吸をして「落ち着いているフリ」をして対応に臨むようにしています
本当は怖いんですけどね…
— 内科医たくゆきじ (@takuyukiji) December 8, 2018
このように実社会でも通用する勉強になるところが本書では多いです。
日露戦争の頃のリーダーとしての立ち振る舞いなどに興味がある方は面白く読めると思いますよ。
燃えよ剣
順をみだすのは、組織を自分の作品のように心得ていた歳三にとって隊律紊乱の最大の悪であった。
・・・燃えよ剣より引用
時は幕末、鉄の結束を誇った新撰組の組織を作った鬼の副長「土方歳三」が主人公の物語です。
坂の上の雲と同じくこちらも司馬遼太郎先生の小説となっております。
だいたいにおいて明治維新は薩長同盟の維新志士が主人公の物語が多いですよね。
それもそのはず。歴史は勝者が作るものだからです。
その点本作は新選組に焦点をあてて描かれていました。つまり敗者側(江戸幕府側)から見た幕末の時代が克明に描かれています。
最初は田舎の喧嘩屋から新選組を経て幕臣として成り上がるも明治維新により立場が逆転。一転して逆賊として追われる立場になってしまう心情の変遷は読んでいて興味深かったです。
自分が正しいことをしていると思い込んでいる時はどこまでも自信を持って行動できるのが人間というもの。
それが逆賊として追われる立場になると自信をもって行動することは難しくなってしまうのでしょう。
特に新選組局長の近藤勇が劣勢に立たされた時
(このひとはやはり英雄ではある)と、歳三はおもっていたが、しかしながらそれはあくまでも時流に乗り、勢いに乗ったときだけの英雄である。
・・・燃えよ剣より引用
と評されていました。
ただこれは無理もないことです。ましてや面子を今よりも重んじるであろうこの時代に逆賊として追われる立場になってしまっては自信を持って行動することが困難でしょう。
このような立場の変遷に伴う心情の変化はとても興味深かったですね。
また本書は組織作りの際の参考になる点がいくつかありました。「読書を仕事につなげる技術」という著作の中で組織づくりのビジネス書枠で紹介されているくらいです。
土方歳三がいかに「新選組」という鉄の組織を作り上げたのかと言うと、「厳格な戒律」と「報告する順序」がポイントでした。
新選組の五箇条は以下のとおりです。
これらに違反した場合の罰則はすべて切腹でした。
実際に脱走した隊員には新選組から刺客をさしむけられていたようです。
厳格な戒律と厳しい罰則。これがこの時代の男たちを死ぬ気で戦わせる組織を作る際の大きなポイントだったのかもしれません。
ただこのやり方は現代日本ではなかなか難しいところだとは思いますが。
その点もう一点の「報告する順序」を意識することに関しては今でも使える教訓だと感じました。
新選組の命令系統は「局長─副長─助勤─平隊士」という形が徹底されていたようです。
報告する際も直属の指揮官を飛び越えての報告は禁じられていました。局長の近藤へ報告が必要な内容でも、その前に副長の土方への報告が義務付けられていたのです。
順をみださない。副長職である歳三の職務的な感情をよく心得ていた。
・・・燃えよ剣より引用
今いる組織において自分の直接の指揮官が誰なのか、また報告内容が誰かを飛び越えていないかについては意識する必要があると本書を読んでから強く感じました。
このように組織における振る舞いも含めて勉強になる書籍ですので、ぜひ一度読んでみてくださいね。
こころ
平生はみんな善人なんです。少なくともみんな普通の人間なんです。それが、いざという間際に、急に悪人に変るんだから恐ろしいのです。
・・・こころより引用
文豪夏目漱石の晩年の傑作「こころ」
本小説の主人公の「先生」は若かりし頃に、両親の遺産を親戚の叔父に騙し取られました。
その結果他人に猜疑心を抱くようになります。
叔父に欺された私は、これから先どんな事があっても、人には欺されまいと決心したのです。
・・・こころより引用
ただこういう経験があったものの、自分には人並み以上の倫理観があると感じていたため
「自分だけは人を騙すことのない清廉な人間だ。」
と思いこんでいました。
ただそれも幻想に過ぎないことに気づくことになります。
というのも三角関係の色恋沙汰で自分が追い込まれてしまった時にあっさり親友「K」を裏切り、恋い焦がれていた女性を自分のものにしてしまったからです。
そしてその後はとてつもない罪悪感に悩まされることになります。
自分も叔父のように人を裏切るような人間だったのだ…と。
その後親友に直接謝る機会をうかがうもなかなか直接謝る勇気が出ない中、Kは自殺してしまいます。
謝る相手が自殺してしまった結果、先生は直接謝る機会を一生失ってしまったのです。
その時の先生の心情は
もう取り返しが付かないという黒い光が、私の未来を貫いて、一瞬間に私の前に横たわる全生涯を物凄く照らしました。
・・・こころより引用
という表現にも現れていました。
私は自分が間違いを犯し、罪悪感を感じてしまった時によくこの小説を読み返します。
そして直接謝れる状況であるならば、先生のようにならないためにも勇気を振り絞って直接謝ることにしています。
だれでもなにかやらかしてしまい、罪悪感や自責の念を抱くことはあるでしょう。
そんな時はこの小説を読み返してください。
こころにおける先生の姿はある種の反面教師として、謝る勇気を与えてくれることでしょう。
教養が身につくおすすめの本や歴史書|まとめ
以上教養が身につくおすすめの本や歴史書を紹介しました。
ぜひ一度読んでみてくださいね。
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