今年の日本不整脈心電学会に参加した。
日本不整脈心電学会にログインしました pic.twitter.com/eF0wmNOeTC
— 内科医たくゆきじ (@takuyukiji) June 10, 2022
現地に赴いて全国学会に参加するのは、実にコロナ禍前に開催された2019年の日本循環器学会までさかのぼる。この時の記録はブログにまとめているので、よければ読んでみてほしい。
日本循環器学会2019では初めてTwitterを活用する場に参加して、少しばかり広報の仕事もできて楽しかったことを覚えている。とはいえ、おそらく今回の学会のほうが、より楽しむことができた。
なぜ前回の学会に比べて楽しいと思うようになったのか。かつて「学会は自分の貴重な休みを潰すいまいましい存在」としか認識していなかったこの私が。
3年前に日本循環器学会に参加した時と、今回日本不整脈心電学会に参加した時の違いについて、なんとなく思うところがあったので、ここに雑感を書き記しておく。
考えが変わった理由――3年間の変化を振り返ると
この3年間で変わったことは以下の通りである。
(1)大学院を卒業し、学位を取得した。
(2)初めて英語論文を書いて、なんとかAcceptまで持っていくことができた。
(3)循環器の中のサブスペシャリティを不整脈にした。
プライベート面も考えるとほかにもあるが、仕事面を3行に要約するとこんな感じである。
3年前は循環器の中のサブスペシャリティも決まっていなかったし、大学院で研究に浸かった経験もなかったし、もちろん英語論文を書いたこともなかった。
この経験が学会に対する感覚に変化をもたらしたと考えるのが妥当だろう。
学会を楽しむための共通言語
唐突だが、歌舞伎や美術品を観るときのことを考えてほしい。
歌舞伎は演技そのものというよりもその歴史的背景についてのウンチクが頭の中にあるからこそ楽しめるという面があると思っている。
他にも例えばゴッホの絵画。
ゴッホの絵画は色合いを鑑賞するだけではなく、実はゴッホが貧乏だっただとか生前は報われなかっただとか、そういうストーリー性を背景として知っているからこそ楽しめる側面もあるように思う。
このように美術品やら歌舞伎やらは「楽しめるだけの基礎知識」をあらかじめ学ぶことでより楽しめるということがあるのではないか。
そして、これは学会にも当てはまるのかなぁと今回思った。
大学院でベッドフリーだったこの2年間で、自分で言うのもなんだが、自分の研究関係の基礎知識はそれなりに向上したなぁと実感している。
見た目は太ったおじさんのままだけど、脳の中身はアップデートされていると感じる。まるでスマートフォンのように見た目は変わらないものの、中身のソフトウェアはアップデートされている。あんな感じの感覚を抱いている。
そういう意味で、この2年間で「学会を楽しめるだけの基礎知識」が身についたからこそ、学会が以前より楽しくなったのかなぁと思っている。
大学院で研究にどっぷり浸かったことや、初めて英語論文を書いたことが大きく影響しているのかもしれない。
どこか“他人事”だった学会が自分ごとに感じられた理由
もう一つの変化として、演者に親近感を抱くことになったのも大きいと思う。
以前に比べ循環器医師としての経験を積んだからなのか、演者の話の内容により共感できるようになったからなのかはわからないが、なんだか今回は演者に親近感を抱いてしまった。
たくゆきじ
私が今回聞いたシンポジウムは、「アブレーション前の血栓評価は造影CTか、経食道心エコーか」という内容のセッションだった。
私が普段悩んでいるようなことに対して、シンポジウムに出るような先生も、同じような悩みを抱えているんだなぁ、と。とにかくそんな感じの親近感を抱いてしまった。
さらに、サブスペシャリティを決定したことも感じ方に影響しているように思う。
今までは学会に参加しても、将来この領域を頑張るということを決めていなかったので、どのセッションを見ても他人事のように思えてしまった部分があった。
学会を楽しむためには、自分が決めた科の中のさらにその奥。サブスペシャリティを決めてからだと、より楽しむことができるように感じた。
結果として今回は、自分の興味のあるセッション、自分が今後携わるであろう内容に絞って見ることができ楽しめたといえるだろう。
まとめ
学会を楽しめるようになったポイントは以下の2つである。
(1)学会を楽しめるだけの基礎知識がついたこと
(2)サブスペシャリティを決めたこと
同じ学会だとしても、考え方や捉え方は経験や時間の経過とともに、徐々に変化するのだなぁと強く思った次第である。
本記事はエムスリーのメンバーズメディアのコラム「医師が考察、「学会=休みを潰す嫌な存在」の考え変わった訳」を加筆、修正したものです。
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