医師向け

高齢の患者さんが心不全や肺炎で入院する時に話さなければならない4つのこと。

高齢者の入院

こんにちは、たくゆきじです。
 
今回の記事では
 
高齢の患者さんが心不全や肺炎で入院する時に話さなければならないこと
 
について記事にします。
 
患者さんの具合が悪い時は入院での治療が必要です。
 
私は内科であり循環器内科でもあるので、肺炎や心不全で入院する患者さんを担当する場合が多いです。
 
入院のときに病状説明を行い、病名や治療法についてお話します。
 
病名が肺炎であれば抗菌薬を使用すること、心不全であれば利尿薬を使用することをお話します。
 
しかし、病状説明を繰り返すうちに病名や治療法の他に話したほうがよい項目が4つあることに気づきました。
 
そのことを意識して病状説明をするようになってから、患者さんのご家族ともめたりすることはほとんどなくなりました。
 
肺炎や心不全に限らずどの領域でも応用できる内容だと思いますので、ぜひご覧下さい。

病状説明の際の前提

基本的に患者さんやご家族は
 
入院して治療するともとどおり治って家に帰ることができる。
 
と考えている方が大多数と思いながら病状説明をしたほうが良いです。
 
私も医師でなければそう思ってしまうでしょう。
 
特に初めての入院の場合はそれが顕著です。
 
そのため病状説明の際には
 

たくゆきじ
たくゆきじ
具合が悪くなって入院するのは今回が初めてですか?

 
と聞いてから病状説明すると良いと思います。

①入院中は必ず体力が落ちること。

1つ目は入院中は必ず体力が落ちることです。
 
入院中には安静度というものがあります。
 
安静度とは
 
「入院中の患者さんが安全に動ける範囲をあらかじめ制限するもの」
 
となります。
 
例えば「ベッド上安静」という安静度は
 
「この患者さんはまだベッドから移動してはいけません。」
 
という制限を指しますし
 
「トイレ歩行」という安静度は
 
「この患者さんはトイレまでなら歩いていいですよ」
 
という制限を指します。
 
病状によって安静度はさまざまです。
 
レントゲンや採血などの検査、本人の症状をみて安静度を決めます。
 
状態が改善すれば徐々に安静度は拡大されていきます。
 
これだけを聞くと
 
「徐々に安静度が上がるんだから問題なさそう。」
 
とも思われがちですが、実はそうではありません。
 
ベッドの上で動かないということは筋力が落ちることを意味するからです。
 
心臓を休めるためにはある程度の安静は必要ですが、体はなまってしまうというジレンマがあります。
 
筋力低下予防のためにリハビリを行いますが、どうしても入院前に比べると筋力は落ちてしまいます。
 
そのため入院するときには
 
「良くなって退院しても生活のレベルが一段階下がる」
 
と伝えています。
 
もともと普通に歩けていた患者さんの場合は
 

たくゆきじ
たくゆきじ
退院できても杖が必要になるかもしれません。

 
と具体的にイメージできるように伝えています。
 
他にも介護認定を受けている方の場合は
 

たくゆきじ
たくゆきじ
介護認定の等級が上がるかもしれません。

 
と伝えるのも効果的です。

②入院中も別な病気になりうる

2つ目は入院中でも他の病気になりうるということです。
 
高齢者は脳梗塞心筋梗塞といった病気になる可能性が比較的高いことも伝える必要があります。
 
私の経験談ですが、心不全で入院中の患者さんが脳梗塞を起こしたことがあります。
 
ご家族の方に来院していただき、病状説明をしていたのですが
 

ご家族
ご家族
入院中なのにどうして脳梗塞になったんですか?

 
と質問されました。
 
入院していると早めに対応できるが、病気になるのは防げない。
 
というのが答えなのですが、入院時の病状説明を振り返ってみると入院中に別な病気が起こる可能性があることについて話していませんでした。
 
この経験を通して、患者さんやご家族の中には
 
入院していると100%安全だ。
 
と思われている方も一定数いることに気付きました。
 
この経験から私は入院時の病状説明の際に
 

たくゆきじ
たくゆきじ
入院中でも脳梗塞や心筋梗塞といった病気になる可能性はあります。

 
と伝えるようにしています。

③入院に落ち着かなくなる人がいる

3つ目は入院中に不穏やせん妄になる可能性があることです。
 
家では全く問題なくても、病院では夜に大声を上げたり暴れてしまう患者さんが一定数います。
 
こういう状態のことを不穏せん妄といいます。
 
特に全身状態が悪いときには起こりやすいです。
 
体感的には心不全や肺炎で入院する高齢の患者さんの3割くらいは不穏になる印象です。
 
しかし、家族の方としてはそんなことが起こるとは夢にも思っていません。
 
家では暴れたりすることがないからです。
 
不穏やせん妄になった場合は鎮静剤を使ったり、抑制を行う場合があります。
 
※抑制とは暴れてベッドから落ちたりしないようにベルトやミトンで対応することです。
 
そのため入院する前に不穏やせん妄になる可能性があることは話しておく必要があります。

④急変した時の対応について

4つ目は急変した時の対応についてです。
 
これが今までの中で最も重要です。
 
入院するときに、治療に反応せず亡くなってしまう可能性があることは絶対に話しておかなければなりません。
 
デリケートな内容なので時間をかけてお話します。
 
また急変したときに蘇生処置を行うかどうかも相談しておく必要があります。
 
何か不測の事態があったときに、医療者と患者さんご家族との間で意思の解離があってはなりません。
 
この話をされないで一番困る医療者は、主に看護師です。
 
急変した時に看護師は医師に報告しますが、医師が到着するまでの間に蘇生処置を行うのかどうかわからない状態だと大変困ります。
 
また当直の医師も大変困ります。
 
蘇生処置を行うのかそのまま看取るのか家族の意向がわからないからです。
 
一回目の病状説明で急変時の対応についてお返事をいただけない場合もありますが、話をしておくことは非常に重要です。
 
関連記事>>>高齢者の治療方針を話すタイミングについて。

テンプレート

どの項目も入院するときに話さなければならない内容です。
 
何度も繰り返し話をするうちに頭に叩き込まれましたが、最初のうちは忘れないように電子カルテに内容を書き込んだ上で確認しながら話をしていました。
 
具体的には

  • 入院する過程で体力は低下します。退院するときには生活のレベルが一段階下がる可能性が高いです。
  •  

  • 入院中に脳梗塞、心筋梗塞等の様々な病気が起こる可能性があります。
  •  

  • 入院中は高齢だと入院に適応できず落ち着かなくなるときがあります。その場合には鎮静剤を使用したり、抑制を行ったりします。
  •  

  • ご高齢なのでいつ何がおこってもおかしくありません。急変したときに心臓マッサージなどの蘇生処置を行うかどうか相談させて下さい。
  • この内容をあらかじめカルテに書きこんでおきました。
     
    最初のうちは頭から飛びやすいので、電子カルテを見ながら病状説明をするのがおすすめです。

    まとめ

    いかがだったでしょうか?
     
    この4つのことを入院時に必ず話すようにしてから、患者さんや患者さんの家族と食い違いが起こることがほとんどなくなりました。
     
    一つの例として参考にしてみて下さい。