こんにちは、たくゆきじです。
私が医師になってから数年が経過しますが、最近思うことがあります。
それは
「わからない」ことを「わからない」ということは難しい
ということです。
この気持ちは医師に限らずだれでも抱くのではないかと思っています。
その心境の変化に関して素直に書いていこうと思います。
研修医の時
研修医の頃は正直何もわかりません。
基本的に知識も無ければ経験もありません。
国家試験の勉強のときに培った知識は土台としてありますが、実務的な内容に関しては本当に何もわかりません。
例えば
この細菌による感染の場合こういう種類の抗菌薬を使うのがよい
ということは国家試験で勉強しますが、
具体的な用量や投与回数に関してはわかりません。
実臨床では具体的な使い方を知らなければ何もできないも同然なので、使い方などを必死になって勉強します。
当然周りの医師も病棟の看護師もそのことをわかっているので、初期研修医に質問してくるものは基本的にいません。
つまり研修医のときは、周りから
初期研修医は基本的にわからないものなんだ
と思われています。
なので、研修医の間は
「知ったかぶりで(やったことのない)治療を行う」よりも
「わからないです」と素直にいうほうがいいと思います。
少なくとも私はそのほうが素直でいいなぁ、と思います。
(もちろん「わからんもんはわからん」と開き直るのは駄目なので勉強は必要です。)
研修医が空けて
しかし、卒後3年目の医師になるとその状況が一変します。
「こいつは(初期研修医だから)知らなくてもしょうがない」
といういわばぬるい状況から
「独り立ちし、専門を決めた医師」
として扱われます。
循環器内科の領域でいうと
「こういう心電図ですけど様子をみていてよいでしょうか?」
と他科の医師から相談をうけたりします。
実際に自分の返事次第でその患者さんの治療方針が変わるので、重く責任がのしかかってきます。
正直言ってめちゃくちゃストレスがかかります。
そして適切な医療を選択できるように研修医のときより必死に勉強します。
しかし、勉強してもどうしても経験が足りず
「教科書やガイドラインにはこう書いているけど、初めての使う薬なので正直自信がない」
という状況が出てきます。
その場合には同じ科の上級医に相談し、その方針で大まかに間違っていないか相談することとなります。
この状況になると自分の専門分野に関して「わからない」とある程度聞きやすいのは同じ科の上級医くらいになってきます。
専門を決めてから数年立つと
それでもなんとか頑張りながら時間が経つと、なんとか一人でこなせるようになってきます。
少ないながら今までの経験と照らし合わせて、治療方針を一人で決めたりコンサルトにも答えられるようになってきます。
このくらいになると段々と科内の立ち位置も変化します。
具体的には後輩の医師ができて、自分が一番下の状況ではなくなります。
こうなると上級医に基本的なことを聞くのはためらわれる状況となります。
「そのくらいのことは知ってるでしょ」
と思われているような気がして、だんだん聞けなくなります。
また、このくらいときに意外とストレスなのは
研修医や後輩から(自分がわからない内容について)質問を受けること
になります。
自分が知っていることであればドヤ顔で教えます。
なんなら聞かれてもないことまで教えちゃうくらいです。
しかし、自分が知らない内容について後輩から質問を受けたときは困ってしまいます。
わからないと答えることが若干恥ずかしいと思う気持ちが芽生え、取り繕ってでもいいからそれらしいことを答えたくなります。
ちなみに現在の私はこの状況です。
それでもわからないものはわからない
私は前に後輩からの質問に対して、完全に理解していないのにあたかもわかったかのような顔をして取り繕って答えた事がありました。
その後に不安になって調べてみたら違っていたのです。
その後に後輩に連絡して「調べてみたらこうだった」と謝りました。
このときに痛感したのは
取り繕っても何もいいことはないな、
ということです。
結局嘘はいずれバレますし、浅い知識で答えても見透かされると思います。
最近は後輩から自分のわからない内容の質問が飛んできたときには
「すまん、答えられない。だから一緒に調べよう。」
みたいな感じで答えるようにしています。
このようにいうのは結構勇気がいります。
特に自分の専門分野であればなおさらです。
それでも
「聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥」
という言葉もあるように、そのときに一緒に調べて知識を共有したほうがいいと思っています。
なので、最近は他科の医師や看護師からわからない質問が飛んできたときも
「申し訳ありませんが、調べる時間をください」
と答えるようにしています。
外来でも「わからない」
ちなみに最近は外来でもそのようにしています。
外来で患者さんから質問が飛んできたときは大体答えられるのですが、たまにわからない質問も飛んできます。
懺悔すると曖昧な答えをいってはぐらかしてあとでこっそり調べていたときもありました。
しかし、最近は
「申し訳ありませんが、わかりません。次の外来まで調べておきますのでそれでよろしいですか?」
と答えるようにしています。
患者さんからも
「医者のくせにこんなことも知らないんですか!?」
と言われるようなことはなく、
「ああそうなんですね、よろしくおねがいします。」
と受け入れて下さる方がほとんどです。
まとめ
わからないことをあたかもわかったかのような顔で答えると、自分が苦しくなる一方です。
努力してわからないことを減らしていくことが大前提ですが、わからないときはわからないと素直に言うと楽になると思います。
キャリアを重ねると「わからない」とさらに言いづらくなるとは思いますが、正直に答えていきたいと思います。