こんにちは、たくゆきじ(@takuyukiji)です。
今回の記事では
を紹介します。
この記事を読まれている先生の中に統計という言葉を聞いたとたん心を閉ざしてしまっている方はいませんか?
だとすると私はその気持ちがとてもよくわかります。
なぜなら私も
たくゆきじ
と本気で思っていたからです。
しかしひょんなことから国際学会でポスター発表をすることになり、その機会に統計の勉強を開始しました。
発表の準備のために勉強せざるを得なかった、というのが大きな理由ですが
とも考えたため統計についてちょっと勉強してみました。
その結果論文への苦手意識は徐々にではありますが克服できており、割と手応えがあります。
そこで今回の記事では
医療統計の本を選ぶ時の基準
医療統計の勉強のためにおすすめできる本
を紹介します。
医療統計の本の選ぶ際のポイント
医療統計の本は本当にたくさん出版されています。
正直言って私もどの本を読んでいいのかさっぱりわかりませんでした。
そこでAmazonで高評価のレビューが付いている参考書を何冊か買って片っ端から読んでみたんですね。
その結果
というある意味当然のことに気付きました。
なぜなら統計の本を買おうと思っている先生の中にも色々なレベルの方々がいるからです。
初めて論文を読む研修医
学会へ向けて初めてデータを解析する専攻医
自分で研究をデザインせねばならない専門医
ここで挙げた方々はそれぞれ医療統計のベースの知識が違うので、参考書に求めるレベルが異なっているわけです。
色々読んでみた結果、医療統計の本は以下の3つのレベルに分類されていると感じました。
【レベル1】
論文を読んで理解できるようになるための本
【レベル2】
自分でデータを解析し発表できるようになるための本
【レベル3】
統計解析の基礎となる数式を理解するための本
そのため本来ならばレベル1の本を読むべき研修医の先生が、Amazonで星4.5のレベル3の方向けの本を読んでも
となってしまいますので、自分のレベルにあった本を選んで読むことが重要です。
では次の章では私が実際に読んだ医療統計の本をレベル別に紹介していこうと思います。
医療統計のおすすめの本・教科書
今回紹介する本は全部で4冊です。
【論文を読んで理解できるようになるための本】
【自分でデータを解析し発表できるようになるための本】
それぞれみていきましょう。
ちなみに先述したレベル3の「統計解析の基礎となる数式を理解するための本」は本記事では取り上げていません。
なぜかというと私自身統計の基礎となる数式を理解しているとは言えず、その本が良いか悪いか評価できなかったからです。
ただ個人的には私は臨床医であって統計の専門家ではないので、数式まで完璧に理解できなくても手段として統計を使いこなせればそれでいいのかなぁと思っています。
いまさら誰にも聞けない医学統計の基礎のキソ
この本はブログやAmazonのレビューで統計初心者に最も優しい本と紹介されていたので最初に読みました。
全3巻のシリーズ物で、1冊あたりのページ数は約160ページです。
とゲンナリされるかもしれませんが、本当に読みやすい本で統計初心者の私が読んでも1冊あたり2時間程度で通読できました。
3巻全て読んでみた感想として、まず第1.2巻を通読することを強くおすすめします。
なぜなら第1.2巻では以下の統計用語に関して本当にわかりやすく解説されているからです。
【統計用語(1巻)】
●P値
●95%信頼区間
●平均値と中央値の違い
●標準偏差
●有意差について
【統計用語(2巻)】
●観察研究と介入研究
●相関
●回帰直線・回帰曲線
●カプラン・マイヤー曲線
●感度・特異度
これらの統計用語を見て眠くなる方ならば間違いなくおすすめできます。
ただ統計の教科書と聞くと
と思われる先生もいらっしゃるかと思いますので、実際のページを紹介します。
自信を持っておすすめできる内容です。
なお第3巻は第1.2巻とは少し毛並みが違い、論文の質を解釈する力を身につけるという内容でした。
普段論文を選ぶ際に
と雑誌名で選んでしまう方は読んでみると勉強になると思います。
統計に自信がなくて論文に書いてある内容を理解できない先生は、まず本書を通読することを強くおすすめします。
「いまさら誰にも聞けない 医学統計の基礎のキソ」のレビューはこちら
いちばんやさしい医療統計
という先生におすすめしたいのがこの「いちばんやさしい医療統計」です。
先程紹介した「いまさら誰にも聞けない 医学統計の基礎のキソ」を通読すると今まで理解できなかった論文を読めるようになりますが、実際に自分がデータを解析しなければならない段階になるともう一段階上の知識が必要になります。
実際にJmpなどで解析してみるとわかりますが、解析のための検定手段は実は一つではなくいろいろな選択肢があるからです。
こういう時、究極的にはどういうことが知りたいのかというと
を知ることさえできればよいわけです。
細かい数式はわからなくても、計算はコンピューターが自動でやってくれるわけですから。
そこでおすすめしたいのがこの「いちばんやさしい医療統計」です。
本書では
に関する解説を極力数式を使わずに例を交えてわかりやすく解説されています。
また
●パラメトリックな検定とノンパラメトリックな検定の違い
●カプランマイヤー曲線での打ち切りとは
●「多重性」に関する概念
といった理解が難しい内容も解説されており、実際に自分が解析するときにとても勉強になります。
そのため自分で実際に解析するにあたり途方に暮れている先生は、まず最初に本書を読んで概要を掴んでみるのがよいと思いますよ。
今日から使える医療統計
この本はAmazonでかなり高評価であり、Twitterでもおすすめされたので読んでみました。
ページ数は164ページと薄い本ですが、中身はかなりしっかり書かれています。
本書では以下の統計用語に関して説明されています。
●交絡と回帰分析
●単変量統計テスト
●回帰分析
●多変量回帰分析と説明変数
●インターアクション
●同等性と非劣性について
ただデータを解析をするにあたって基礎となる知識ですので、この本でしっかりと勉強しましょう。
ちなみにこの本は通読すべき読み物型の本なのですが、かなりしっかり書かれた割と骨のある書籍のため
という率直な感想をもちました。
私も読んでいる途中でTwitterでこんなコメントを呟きましたから。
これを頑張って読んでいるのですが、内容が私にはちょっと高度な印象で読みきるには時間がかかりそうです…
この本を読まれた先生方の印象としては、通読するべき本なのでしょうか?
それとも発表や論文の準備で検定法を調べたりするような、わからない時に調べる辞書的な本なのでしょうか? pic.twitter.com/5Z2hBIraic— 内科医たくゆきじ@ZOZOスーツダイエット (@takuyukiji) 2018年8月19日
そのためまずは本書を読む前にいちばんやさしい医療統計を読んで統計に関する基礎知識を身につけてから、本書にチャレンジしてみるとよいと思います。
ちなみに著者の新谷歩先生はYoutubeで自身の講義を配信されており、その動画を視聴するとかなり理解が深まりました。
この本を読む場合は動画を見ながら読み進めるのがおすすめです。
マンガでわかる統計学
見た目からして初心者のための本のようなので購入して読んでみました。
本書はマンガ→マンガの解説→例題と解説→まとめで1セットの7章構成です。
①データの種類をたしかめよう!
②データ全体の雰囲気をつかもう!(数量データ編)
③データ全体の雰囲気をつかもう!(カテゴリーデータ編)
④基準値と偏差値
⑤確率を求めよう!
⑥2変数の関連を調べよう!
⑦独立性の検定をマスターしよう!
こちらの内容についてタイトル通りマンガを交えて解説されています。
マンガでわかる統計学より引用
漫画がメインなのでコーヒーブレイクのような気持ちで読むことができますが、途中から数式がポツポツと出てきて基礎知識がなければ理解が難しい箇所がちらほらありました。
本書の統計の本としての位置づけは
という立ち位置が妥当だと思います。
統計を復習したり理解を深める本としてはおすすめの内容ですので、上の3冊を読んだ後に復習がてら読んでみてくださいね。
医療統計の本を読む際におすすめしたい順番
最後に本記事で紹介した本を読む際のおすすめの順番と実際に勉強するときの流れを紹介します。
①抄読会で論文を読むことになり、統計用語のわからなさを嘆く。
②「いまさら誰にも聞けない 医学統計の基礎のキソ」を通読する。
③もう一回論文を読んでみると、P値や95%信頼区間がわかるようになって嬉しくなる。
④実際にデータを解析する段階になると、もう一歩踏み込んだ知識が必要になることに気づく。
⑤「いちばんやさしい医療統計」を読んで、データごとにふさわしい検定手段を学ぶ。
⑥だんだん解析できてうれしくなる。
⑦新谷歩先生の動画を観ながら「今日から使える 医療統計」を通読して知識を補完する。
⑧「マンガでわかる統計学」も読んで知識を整理していく。
この方法で勉強すると徐々に統計の用語が身についてくると思いますよ。
なお本ブログには英語論文を読むのが苦手な医師に必要な勉強法をまとめた記事もありますのであわせてご覧ください。
医療統計のおすすめの本・教科書|まとめ
国際学会の準備のために統計の勉強をしてみて
と強く思いました。
逆に言うと一度頑張って統計の勉強をして身につけると後々楽ができると思います。
ぜひこの記事で紹介した本を読んで勉強してみてくださいね。
【論文を読んで理解できるようになるための本】
【自分でデータを解析し発表できるようになるための本】
他におすすめする医学書はこちらの記事でも紹介しています。
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