こんにちは、たくゆきじ(@takuyukiji)です。
今回の記事では
を解説します。
研修医になって現場で働き始めると国家試験の勉強で得た知識だけではついていけず、さらに勉強が必要なことを痛感すると思います。
私が初めて現場に出た時は
ルートの取り方
処方の仕方
指示の出し方
などわからないことだらけでした。
特に救急外来でのカルテの書き方に困ったことは今でも覚えています。
研修医になったら必ず救急外来での当直をする日が来るのですが、私はその最初の当直の時に色々と不安になってしまいました。
たくゆきじ
だとか
など悩んだことをよく覚えています。
今研修医として頑張っている先生方の中にも同じように悩まれている先生もいらっしゃるかと思います。
そこで今回の記事では
を皆さんにお伝えします。
具体的には以下の内容を紹介します。
救急外来での問診のコツと問診用のテンプレート
身体所見(腹痛、神経学的初見)のテンプレート
小児の問診用のテンプレート
カルテの書き方を学べる本
ではご覧ください。
カルテの書き方のコツは引き算として考えること
私が考えるカルテの書き方のコツは
です。
問診中に項目を徐々にカルテに書き足している方はいませんか?
この方法だと必要な項目がいくつか抜けてしまうことが多いんですよね。
もう一度診察室に患者さんやご家族を呼んで必要事項を聞き取ったり身体所見ととったりするとなると二度手間となります。
そのため私は、
という方法で問診しています。
なお私が作ったカルテのテンプレートも当ブログで紹介していますのでぜひご覧ください。
救急外来でのカルテのテンプレート(問診)
ではまず問診の際のテンプレートを紹介します。
私は救急外来で患者さんを診察するときは以下の項目を毎回立ち上げています。
【主訴】
【現病歴】
【アレルギー歴】
【既往歴】
【内服薬(かかりつけ医は)】
【平素のADL】
【同居家族】
【妊娠の可能性(最終月経)】
【所見】
アレルギー歴
アレルギー歴は必ず聞いておきましょう。
患者さんが入院する際には薬の処方と食事の入力が必要です。
この時にアレルギー歴がカルテに書いていないと入院時のオーダーが出せない時があり不便です。
また入院の際の指示簿にその患者さんがアレルギーを起こしたことのある薬(例:ロキソプロフェン等)が入っている時もあり、その確認のためにもアレルギー歴の問診は必須です。
既往歴
既往歴も言うまでもなく重要です。
同じ腹痛の患者さんでも
①開腹術の既往のある患者さん
②いままで何も既往のない患者さん
では診察に臨む姿勢が異なりますよね。
そのため既往歴は必ず確認しましょう。
なお虫垂炎や帝王切開などは患者さんが既往歴と考えていない場合もあり、注意深く問診しましょう。
👨⚕️「今まで手術を受けたことはありませんか?」
👨🦳「ありません」
このような問診後に診察すると手術痕があり
👨⚕️「こちらは…?」
👨🦳「前に盲腸の手術をしました。盲腸は手術のうちに入らないと思ってました」
ということが割とあります
盲腸(虫垂炎)も立派な手術歴ですので申し出てくださいね
— 内科医たくゆきじ (@takuyukiji) January 18, 2020
なお手術などの侵襲的な治療を行っている場合は、その治療を行った病院名と時期も記載するようにして下さい。
内服薬
内服薬も確認すべき重要な情報です。
内服薬を確認する際の注意点として
が挙げられます。
患者さんに内服薬を確認しても複数あるかかりつけ医から出されている薬の一部しか言わないときがあるので、かかりつけ医を確認したら
と尋ねて他のかかりつけ医がないか確認するのがよいでしょう。
また内服薬をカルテに書くときは、かかりつけ医ごとに内服薬を分けて書いたほうが丁寧です。
なぜかというと退院時にかかりつけ医に紹介状を書く時に、もともとの内服薬がどっちの医院から処方されていたかわからなくなるからです。
平素のADL、同居家族
これは自分で主治医を受け持つとわかるのですが、患者さんの社会的背景の把握は大変重要です。
私は患者さんの社会的背景について必ず3つ確認しています。
①介護認定の有無
②食事、トイレ、移動は自立しているか
③認知症の有無
この3つです。
介護認定がついている場合には、大体のADLのイメージが湧くようになります。
またついていない場合も
など入院中にしなければならないことのイメージも湧くのでぜひ介護認定の有無は書いて下さい。
食事の自立や認知症の有無に関しては入院中に不穏になる可能性などを考慮する要因となるので、記載すると病棟の看護師さんにとって親切です。
同居家族に関しても独居の患者さんは家に帰れないことが多々あり、介護のマンパワーを把握する意味でも確認しておくと後々役に立ちます。
特にご高齢の患者さんが入院する場合は社会的背景をしっかり確認しておきましょう。
妊娠の可能性
「女性をみたら妊娠を疑え」という格言があります。
その格言通り女性を診察するときには妊娠の可能性は念頭において診察する必要があります。
また妊娠中は禁忌の薬剤も多いので、妊娠の有無は絶対に確認する必要があります。
なお男性研修医が女性の患者さんに妊娠の有無を聞くことには心理的な抵抗があると思います。
私の場合は問診する際に
と聞くようにしています。
これだと違和感なく妊娠の有無を確認できますよ。
またすこしでも疑わしいときは妊娠反応を取るのをためらわないで下さいね。
なお妊娠の可能性についての問診は前にTwitterでこちらの内容をつぶやいた時に参考になるご意見をたくさんいただきましたので、よろしければご覧になってくださいね。
女性を診察する時は何歳まで妊娠の有無を確認すべきか悩みます
私の聞き方が悪かったのかもしれませんが、以前50歳台の女性の方に妊娠の有無を確認したところ少しムッとされた経験もありますので…
私は60歳以下の場合は基本的に聞くことにしているのですが、どのくらいが一般的なのでしょうかね
— 内科医たくゆきじ (@takuyukiji) October 17, 2019
救急外来でのカルテのテンプレート(身体所見)
ここからは身体所見のテンプレートを紹介します。
身体所見のカルテ記載も問診と同様で、診察項目を思いつくままカルテに足す方法だと項目が抜けてしまうことが多いです。
今回はその中でも使用頻度の高い腹痛と神経学的所見のカルテの書き方を紹介します。
腹痛
では腹痛のテンプレートを紹介します。
生活歴:飲酒、喫煙、生鮮食品、海外渡航歴
随伴症状:尿の色調、排尿障害、月経異常
増悪因子:食事内容、体位変換など
abd:平坦、軟、圧痛なし、グル音+、板状硬(-)、反張痛(-)、Murphy徴候(-)
嘔気 (-)
下痢 (-)
便秘 (-)
吐血 (-)
鮮血便 (-)
黒色便 (-)
排ガス (+)
最終食事時間:
神経学的所見
こちらは神経学的所見のテンプレートです。
めまい、麻痺などの症状がある患者さんには神経学的所見を取ります。
神経学的所見も項目が抜けやすいのでしっかり準備しましょう。
JCS GCS E4V5M6
視野障害なし
pupil R=L / LR /
EOM full and smooth
顔面知覚 痛覚、触覚ともに左右差なし
前頭筋、眼輪筋、口輪筋の左右差なし
鼻唇溝左右差なし
聴力左右差なし
カーテン徴候なし
舌正中、舌運動正常
構音障害なし
上肢Barre、下肢MLS 左右差なし、麻痺なし
指鼻試験、膝踵試験 正常
救急外来でのカルテのテンプレート(小児)
小児の診察は大人の診察とは全然別物です。
あくまでも一例ですが私は所見の取りもらし、問診の聞き漏らしがないように以下のテンプレートを立ち上げています。
【主訴】
【現病歴】
【アレルギー歴】
【家族歴】
【家族構成】
【かかりつけ医】
【既往歴】
【内服薬】
【周辺感染】
【ワクチン接種歴】
【所見】
身長 cm 体重 kg
項部硬直なし
四肢を活発に動かす グッタリ感の有無
chest:no murmur no rale
abd:腹部軟 グル音+
咳() 痰() 鼻汁()
眼球結膜充血() 眼瞼結膜充血()
頚部リンパ節腫脹なし
発疹なし
鼠径部に膨隆なし
口腔:咽頭発赤なし 白苔なし 湿潤
ツルゴール低下なし
嘔吐物の性状:血性、胆汁の混入など
排尿: 回数
排便:
水分摂取:可能
この中で忘れがちながら聞き忘れると困ることは体重です。
小児は体重で処方する薬剤の量が変わるため、聞き忘れないようにしましょう。
救急外来でカルテのテンプレートを立ち上げるときの注意点
以前Twitterでこの記事を紹介したときに以下のようなご意見をいただきました。
例えば、JCS II-30です。という触れ込みで救急搬送された患者さんのカルテにテンプレでIII-300と記載されてて、これを保存してから診察の結果II-20に直したとします。
その後、不幸な転機になった場合、カルテ開示で「来た時にIII-300なのに後から改竄した」と言われた場合に確認が難しくなります。
— 出奔希望_T (@spooky_desire) 2018年7月26日
確かにテンプレートを作っておくと抜けは少なくなりますが、テンプレートと実際の患者の所見が食い違うことになります。
カルテを一旦確定してから直そうとすると電子カルテによってはその修正が電子カルテのデータ上に残っており、場合によってはカルテの改ざんと捉えられることもあるかもしれません。
そのためテンプレートを立ち上げた場合は、実際の患者の所見になおしてからカルテを確定させることを心がけましょう。
カルテの書き方を学べる本
今回は救急外来での問診や身体所見のテンプレートを紹介しました。
ただカルテ記載は当然それだけではなく、色々な場面で出てきます。
外来や病棟でのカルテもありますし、退院時サマリーなども広い意味ではカルテ記載だと思います。
そのへんを網羅的にまとめた本が今回紹介する「型」が身につくカルテの書き方です。
この本で解説されている項目は
●SOAPの解説
●入院時要約
●退院時サマリー
●外来でのカルテ記載
●訪問診療でのカルテ記載
●救急外来でのカルテ記載
●集中治療室の患者のカルテ記載
と幅広く、状況に応じたカルテ記載の型を身につけることができます。
色々な状況に応じたカルテ記載を身につけたい方は一度目を通してみてくださいね。
救急外来でのカルテのテンプレート|まとめ
以上具体的なテンプレートを交えて救急外来でのカルテの書き方を解説してみました。
研修医の先生向けの記事としてはこちらの記事もおすすめです。