こんにちは、たくゆきじ(@takuyukiji)です。
今回の記事では
を記事にします。
ST上昇型急性心筋梗塞(STEMI)は緊急性の高い疾患で心電図を見た時点で循環器内科にコンサルトすると思います。
私はコンサルトを受ける側ですが、STEMIのコンサルトが来たときにチェックすべきポイントが3つあります。
①既往歴を詳細に確認する
②抗血小板薬(DAPT)を内服しているか確認する
③緊急カテではなく緊急手術となる病態がないかチェックする
これらについてどういう考え方をしているか循環器内科目線で私の意見を解説します。
循環器内科以外の医療関係者もこのことを知っておくとカルテ記載やコンサルトの助けになると思いますのでぜひご覧ください。
たくゆきじ
私が意識している3つのポイント
先ほどもまとめたようにSTEMIのコンサルトが来たら私は3つのポイントを意識しながら診療しています。
①既往歴を詳細に確認する
②抗血小板薬(DAPT)を内服しているか確認する
③緊急カテではなく緊急手術となる病態がないかチェックする
これらについて解説していきます。
①既往歴を詳細に確認する
既往歴の確認は重要なポイントです。
STEMIのときは緊急での心カテとなることが多いですが、その際に循環器内科医は心カテのアプローチ部位を決めなければなりません。
アプローチ部位は橈骨動脈アプローチと大腿動脈アプローチに分かれます。
そのアプローチ部位を患者さんの既往歴によって変えるときがあります。
具体的には以下の状況です。
●透析中でシャントがある場合
●閉塞性動脈硬化症(ASO)がある場合
●胸部大動脈瘤(TAA)や腹部大動脈瘤(AAA)がある場合
こういう状況の場合にはアプローチ部位を変更するときがあります。
また術中に大動脈バルーンパンピング(IABP)が必要な場合もあり、既往歴の詳細な確認は必要です。
なお私はアプローチ部位を決定するときに余裕があれば職業も聞くようにしています。
例えば職人さんや外科医など手先の感覚が重要な職業の場合は、利き腕ではないほうの橈骨動脈からアプローチするようにしています。
②抗血小板薬(DAPT)を内服しているか確認する
STEMIに対してPCIを施行する際には抗血小板薬2剤(Dual Anti-Platelet Therapy:DAPT)の内服が必要となります。
アスピリン+クロピドグレル
アスピリン+プラスグレル
今まで抗血小板薬を内服していなかった場合はLoading doseという維持期よりも多い量をPCI前に内服させます。
アスピリン:100mg
クロピドグレル:75mg
プラスグレル:3.75mg
アスピリン:200mg
クロピドグレル:300mg
プラスグレル:20mg
ちなみにもともと抗血小板薬を内服している場合はLoading doseでの内服を行わずにPCIを施行します。
例えばアスピリンのみ100mg内服していた方がSTEMIになった場合は、PCI前にプラスグレルのみLoading dose(20mg)で内服するのが一般的です。
このようにもともと抗血小板薬を内服していたかどうかでPCI前にLoading doseで内服するかどうかが異なるため内服薬の確認は必須です。
③緊急カテではなく緊急手術となる病態がないかチェックする
STEMIの場合に緊急カテではなく緊急手術が必要となる病態があります。
①急性大動脈解離に伴うSTEMI
②心筋梗塞後の機械的合併症
・心破裂
・心室中隔穿孔(Vsp)
・乳頭筋断裂にともなう急性僧帽弁閉鎖不全症
頻度は少ないですがこれらの病態の場合は救命のために緊急手術が必要となります。
そのため私にコンサルトが来たらこれらの病態の除外を行い、除外できたら緊急心カテに向かいます。
なおこれらの病態の除外のためには以下の身体所見や検査を意識しています。
●胸部X線で縦隔陰影の拡大
●心エコーで大動脈弁逆流,心嚢液貯留、上行大動脈のflapの確認
●聴診で収縮期雑音を聴取するか(心室中隔穿孔、乳頭筋断裂でのMR)
●心エコーでMRの有無、VSPの有無、心嚢液貯留の有無の確認
これらの検査を行い自分の中で否定できたと思えた時点で緊急カテに踏み切る感じです。
ただし大動脈解離に関しては上の検査だけでは確実な否定はできませんので一抹の不安は残したままのPCIになります。
循環器内科医にコンサルトするときに準備しておいてほしいもの
上に書いた項目は私が循環器内科として働く中でSTEMIのコンサルトが来たときに意識していることです。
逆に言うとコンサルトが来た時点で上記の情報があるとスムーズに診療にうつることが出来ます。
以下にコンサルトの際に揃えてほしい情報を改めてまとめます。
①既往歴の確認
(透析の有無、大動脈瘤の確認、ASOの確認)
②職業の確認
(アプローチ部位の選択(利き手を避ける))
③内服薬の確認
(抗血小板薬の服用の有無)
④検査結果の準備
(胸部X線、採血、心電図、心エコー)
コンサルトされている時点でこの情報が揃えてあると助かります。
まとめ
以上ST上昇型急性心筋梗塞の患者さんに対する対応で私が意識しているポイントについてお伝えしました。
何かのお役に立てれば幸いです。
※なおこの記事が完璧だとは全く思っていないので、循環器内科や心臓血管外科の先生でご意見がある場合にはぜひTwitterでご指摘頂けましたら幸いです。記事を訂正いたします。
<<参考文献>>
急性冠症候群ガイドライン(2018年改訂版)/日本循環器学会